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夏の記憶が鮮明な今だからこそ観たい『きみの鳥はうたえる』

アカリ
アカリ

恋愛映画&人生映画が大好物。大学時代に観る専だと勘違いして入った映画研究会で、自主制作映画の女優をや...

『きみの鳥はうたえる』 予告編

2018年9月1日ロードショー。
この公開日設定には、意思があるような気がする。
あなたの今年の夏の記憶が鮮明なうちに観てほしい、そんな意思だ。

(C) HAKODATE CINEMA IRIS

映画で描かれるのは夏の函館、3人の若者。「僕」と「佐知子」と「静雄」。
原作は佐藤泰志による同名の小説で、原作では国立や国分寺が舞台だが、映画では舞台を函館に移している。
劇中、「僕」を演じる柄本佑が、(たぶん)エアコンのない狭いアパートの部屋で汗で胸をじっとりさせながら「あちー」と言うシーン。
いつもの夏なら、函館って涼しいんじゃね? と思えて一瞬現実に引き戻されちゃいそうだけれど、函館ですら30度超えした2018年の夏なら、なんだかすごくリアリティーがあって、映画の世界に没入できそうだ。

ところで、私はいつも映画館では大体ハイボールかビールを飲みながら観るのが常なのだけれど、映画でキャストが飲み食いしてるシーンでは口をつけないという変なマイルールがある。(周囲の人から、「なんだあいつ、映画の世界に乾杯!してるんじゃ?」とか思われてる気がして恥ずかしい。。。)
けどこの作品、とにかく劇中で3人が飲んたり食べたりしまくる......から角ハイが飲めない飲めない!

(C) HAKODATE CINEMA IRIS

そう、この作品は、客観的に見たら、というかしらけた世間の目から見たら、「僕」と「佐知子」と「静雄」が、毎晩のように3人でお酒を飲んで、ビリヤードして、踊って、歌って、ただ夏を過ごしているだけの物語だ。
でも、3人の中には3人なりのルールだったり、均衡があって、彼らは一つ一つ丁寧にやりたい事をやりながら、結果的にその時やらなきゃいけなかったことを多分全てやって、その結果 お互いに少しずつ状況を変化させていく。

(C) HAKODATE CINEMA IRIS

少なからず「まとも」な生活を送っている人間にとっては、なんとも不愉快で、不可解で、それでいてうらやましいくらい刹那的で自由な毎日を送る3人。
楽しいことをして何がいけないの? したい事して何が悪いの?
......ってそれ正解! 結局、そんな彼らを批判できる本当に「まとも」な人なんて、多分世の中に一人もいないからね。

(C) HAKODATE CINEMA IRIS

この映画のコピーでは「青春映画の傑作」という言葉が使われているのだけれど、彼らの刹那的生活を「青春」という2文字でくくってほしくないな、とは思う。
理由は2つ。
1つめは、この映画で描かれている人間関係は、名前が付けられないカンケイが多いから。
友達、同僚、親子、恋人。
彼らの曖昧な関係性にありきたりな名前をつけてしまうと、途端に輝きを失ってしまう。「まとも」な世界に連れて行かれてしまう。
2つめは、こういう曖昧な感情や関係は、何も若い(?)彼らだけのものじゃない気がするから。

そんな中、劇中を通じて流れる、微妙にテンポのずれた、不協和音のようなHi'Specによる音楽が心地良い。

(C) HAKODATE CINEMA IRIS

映画のタイトル『きみの鳥はうたえる』は、原作に登場するビートルズの曲『And your bird can sing』の和訳だが、一般的に世に知られている、ビートルズのアルバム『リボルバー』に収録された「まともな」バージョンではなくて、アルバム『ザ・ビートルズ・アンソロジー2』に収録されている、ジョンとポールが笑い転げながら歌にもならない感じで歌っている、ボツになったテイク2のバージョンの方が、この映画の世界観に近い。

(C) HAKODATE CINEMA IRIS

夏の終わりが忍び寄る頃、今年の夏の思い出もどこかに消え去ってしまうのかしらね。。。
そんなちょっとした焦燥感と肌寒さを感じ始める時期にぜひ、彼らの夏を追体験してほしい。

きみの鳥はうたえる
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アカリ
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恋愛映画&人生映画が大好物。大学時代に観る専だと勘違いして入った映画研究会で、自主制作映画の女優をやらされた経験アリ。『Lolita(1997)』『SATC』大好き。

記事はここで終わりです。

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