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『サヨナライツカ』の言葉が胸に刺さる......せつなさ、さみしさ、サヨナライツカ

アカリ
アカリ

恋愛映画&人生映画が大好物。大学時代に観る専だと勘違いして入った映画研究会で、自主制作映画の女優をや...

私が今ハマっている、歌人の俵万智さんの本を読んでいたら、こんな一節があった。

「幸せには『○○だから』というような、ある程度客観的な理由が存在し、他人もそういうものさしで人の幸せを見ている。が、喜びというのは、人それぞれで、何をもって喜びとするか、どういうときに喜びを感じるか、に客観的な理由というのは存在しない」
それと同じように、
「淋しさには、客観的な理由がある。この人は淋しそうだなあと、他人でも想像がつく。でも、せつなさは人それぞれ」
なのだそうだ。
(俵万智『あなたと読む恋の歌百首』(文春文庫)より引用。)

この一節を読んで、西島秀俊と中山美穂主演の映画『サヨナライツカ』を思い出した。

主人公は「好青年」と周りからの評判の豊(ユタカ)。
航空会社に勤めていて、仕事もノリに乗っている。年齢は30代半ばくらいだろうか。
赴任先のタイ・バンコクにいて、日本には、実家が大金持ちのフィアンセ、光子(ミツコ)がいる。将来は約束されたも同然だ。

※画像はイメージです 写真:アフロ

そんな独身最後を謳歌(おうか)する豊の前に、謎の女性、真中沓子(マナカトウコ)が現れて......。

ストーリー自体は、こんな事本当にあるのかしらという感じだけれど、(いや、小説だって映画だって虚構なのだから、あり得ない話でいいのだけれど)。映画前半は、「画」で十分楽しめる。
バンコクというエキゾチックな雰囲気に、汗ばむ西島秀俊と中山美穂が折り重なるシーンは、それ自体で美しい。
デートのたびに、別人のように服や髪形を変えて登場する中山美穂も、毎回のデートがそんなに楽しいのかと、いじらしくて本当にかわいい。

映画後半では、年を重ねた登場人物たちを表現するメイクの技術がイマイチで、それだけが残念......。
でも、光子を演じる石田ゆり子の好演でなんとかもっている感じだ。

ところで、題名の『サヨナライツカ』は、光子が劇中で創作する詩のタイトルなのだけれど、これは一体どういう意味なんだろうか。

「さようなら、いつかまた会いましょう」と、未来に希望をつないでいるのか。
「今はこんなに楽しいけれど、いつかさよならが来てしまうんだろうな」と、楽しい今を見つつも、忍び寄る終わりを予感しているのか。
はたまた、「あなたとは、いつかさよならしなくてはいけないのだから......」と先回りして、今を楽しむことをやめようとしているのか。

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冒頭でご紹介した俵万智さんの言葉を思い出せば、
例えば、ラブラブで幸せそうに見えるカップルでも、心の中では「サヨナライツカ」とせつない気持ちでいっぱいかもしれないし、
一方で、今まさに別々の道を歩もうとしている淋しそうなカップルでも、2人だけに分かる「サヨナライツカ」があって、小さな喜びをはらんだ淋しい別れなのかもしれない。

......恋愛ってほんと難しいですね。
そしてこんな繊細な感情に振り回されるって、ほんとつかれる(笑)。
ややこしいことを考えたくなかったら、たぶん恋愛をしないか、結婚をするのが一番。サヨナラにおびえることも、不安になることもない。

ただ、劇中で繰り返し語られる言葉が胸にささる。
―――人間は死ぬとき、愛されたことを思い出す人と、愛したことを思い出す人に分かれる。

せつない。

今幸せな人もそうでない人も、淋しい人もそうでない人も、ぜひこのせつない『サヨナライツカ』を味わってみてください。


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映画『サヨナライツカ』配信期間:2018年12月12日〜12月25日
あらすじ:1975年、バンコクの高級ホテルに暮らしている沓子(中山美穂)は、お金に不自由なく、男性から愛される満された日々を送っていた。ある日、沓子はバンコクに赴任してきたエリートビジネスマンの豊(西島秀俊)と出会い、二人はたちまち惹(ひ)かれ合うが、実は豊には東京に残してきた光子(石田ゆり子)という婚約者がいた。[シネマトゥデイ]

アカリ
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恋愛映画&人生映画が大好物。大学時代に観る専だと勘違いして入った映画研究会で、自主制作映画の女優をやらされた経験アリ。『Lolita(1997)』『SATC』大好き。

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