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【ネタバレあり】あふれる愛の物語『クリード 炎の宿敵』

スーパーネイチャー
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マトリックスをSF金字塔と崇め、過去19回視聴。今年は念願の20回目に挑戦。鑑賞映画1700本、超大...

『クリード 炎の宿敵』 予告編

一言で言うと、傑作である。控えめに言っても名作、大きく言えば今年のマイベストだ。まだ1月で決めるのも時期尚早ではあるが、とりあえず上期で『クリード 炎の宿敵』を上回る作品は、そうそう出てこないだろう。

(C) 2018 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. AND WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

新生ロッキーとも言える「クリード」シリーズ第2作のいったい何が良かったのか。クリードは、伝説のボクサーである父の後を追い続け、チャンピオンに上りつめた男。その次の相手は、父を死亡させた張本人、イワン・ドラゴの息子だった。親の因縁を背負って戦う若きファイターたちに待ち受ける試練、葛藤、リングに上がる覚悟が描かれた物語は陳腐すぎるほどありきたりだ。ドラゴの息子と2回対戦することになるのも、開始10分で読めてしまう。当然、一度目は負け、二度目はリベンジマッチ、という形だ。

だが本作には、その筋書きを補って余りある魅力で満ちあふれている。魅力とはもちろん、登場人物から発せられている。誰から語るべきか悩ましいが、やはりロッキーから始めるべきだろう。前作で見事ガンに打ち克ったロッキーもお年寄りという言葉が似合う年齢となった。見た目はまだ元気だし、体形も何とか維持している。だが孤独に苛まれ、クリード以外に話す相手もいない。物語中盤でクリードの娘が生まれるが、病室に思わず駆け込むクリードと、行きたくても中に入れないロッキーが対照的だ。この「輪に入れない孤独」は自分の家族にも当てはまり、息子とは『ロッキー・ザ・ファイナル』以来、10年以上も連絡を取っていない。その間に孫も生まれているが、ロッキーは当然会ったこともない。その事実を、クリードからも指摘される。

(C) 2018 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. AND WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

そのロッキーは、本作で何度となくクリードに教えを述べている。はっきり言って、説教臭い。そりゃ怖いもの知らずのクリードから煙たがれるのも無理はない。だが、言っていることは至極まっとうなことばかり。いったい何のために戦うのか、相手は失うものはないが、おまえはどうだ。最初のドラゴとの試合を自分の店で観戦するも、つい熱くなってセコンドにいるかのように独り言のアドバイスを口にする。クリードに伝えたいことがとにかく、尽きないのだ。その教えは後半、過酷なトレーニングという形でも現れる。これでもか、これでもかとクリードを追い込んでいくのはなぜか。何かあるとすぐ、自宅フィラデルフィアからクリードの待つロサンゼルスに駆けつけるのはなぜか。本作でクリード夫人となるビアンカが、分からず屋の夫にこう答える。「ロッキーはあなたを愛しているからよ!」

本作ではさまざまな愛の形が登場する。チャンピオンになった夜、ビアンカにプロポーズするクリード。ロッキーがエイドリアンに何と言って婚約したか聞き出そうとする。亡き妻を思うロッキーの目の、何と優しいことか。ビアンカを連れて母を訪ねた際、夕食後にドラゴの息子と戦う決意を伝える。母、メアリーアンは決して止めようとしない。もう大人なのだから、私の同意は必要ないでしょと告げる目の、何と厳しいことか。そして惨敗。その後、娘の誕生が心を慰めるものの、戦意喪失した状態が続く。ある夜、妻から娘を預かったクリード。泣き止まない娘を連れて訪れたのは、敗北以来、足が遠のいていたボクシングジムだ。サンドバッグに向かい、娘に見せるつもりで、軽くジャブを繰り出す。だが気持ちがだんだん高ぶり、気が付けば突きのラッシュを、娘すらも忘れるほど無我夢中に打ちつけていた。ハッとわれに返ったクリードは慌てて赤ん坊を抱き寄せ、男泣きする。「ここが俺の居場所なんだ」と気持ちを吐露する。

(C) 2018 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. AND WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

一方の挑戦者たるドラゴ一家ではガラリと形が変わる。かつて英雄だった父、イワン・ドラゴは、ロッキーに敗れたことで全てを失ってしまう。30年経た今でも安いアパート暮らしで、息子を自己流でボクシングマシンに育て上げる。まさに『巨人の星』を地で行くような暮らしぶりだ。自分を捨てた祖国、そして妻に恨みを抱きつつ、憎悪の対象をロッキー=クリードに向けていく。ロシア政府高官に招待された晩餐会の席で、その妻と数十年ぶりの再会を果たす。威厳と色気を漂わせ、ますます美しくなった妻の姿に伏し目がちになるイワン。その姿を見かね、途中退席してしまう息子、ヴィクター。追ってきた父に対して「連中はあなたを利用し、こんな風な暮らしに追いやったんだ! なぜ愛想良くする必要がある?」と問い質す。父の答えはただ一言、「俺は負けたんだ」。それで息子はハッとする。敗北とはそれほどまでの一大事。だからこそ何が何でも、勝利をつかみ取る必要があるんだと。

ここまで行くと、もはや愛とは呼べないだろう。だがここまでこだわっていた勝利を試合の最終盤で捨ててまで、愛を選択するシーンがある。その瞬間、映画の主役はこのドラゴ親子に移ったと思う。本当に些細な会話が交わされるだけだが、その瞬間をぜひアナタの目で確かめて欲しい。

登場人物の魅力とは、その人物特有の愛の形だ。ドラゴ親子に勝利した後、クリードの周りを大勢の人々が取り囲み、祝福する。その中にロッキーの姿はない。誰よりも喜んで当然なはずだ。クリードが困惑した表情でリング上から見下ろす。「これからはおまえの時代だ」と拳を伸ばし、クリードのグローブとそっとぶつかる。守破離がここで完成したことを示す儀式だ。だがロッキーは決して孤独な老人に戻るわけではない。彼もまた、自分の人生と向き合う勇気をもらったのだ。愛とはまさに誰かに何かを与えるだけでなく、同時に何かをもらうことである。家族に電話一本かけられなかったロッキーが、長年疎遠にしていた家族に会いに行く。それこそがロッキーの、ロッキーからの守破離と言える。彼はもう、孤高のファイターではないのだ。けれどもし可能なら、もう一度彼の姿を映画館で観たい。それこそが私たち観客の、彼に対する愛と言えるのではないだろうか。

『クリード 炎の宿敵』
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マトリックスをSF金字塔と崇め、過去19回視聴。今年は念願の20回目に挑戦。鑑賞映画1700本、超大作からミニシアターまでこなすオールラウンダー。

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