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映画史に残るオープニングで夢追い人が歌い踊る『ラ・ラ・ランド』

アカリ
アカリ

恋愛映画&人生映画が大好物。大学時代に観る専だと勘違いして入った映画研究会で、自主制作映画の女優をや...

私は『ラ・ラ・ランド』のオープニングシーンを観ると、必ず胸がギュンギュン切なくなってしまう。
なぜならそこに、映画に関わるすべての無名の人たちの存在を感じるから。映画が映画として存在するためには、こうした名もなき、愛すべき、夢追い人たちが必要なのだ、という強いメッセージが伝わってくるからだ。

『ラ・ラ・ランド』の舞台はLAこと、ロサンゼルス。
エンターテインメントの聖地ハリウッドがあり、西海岸のカラフルな日差しが照りつける、夢のような街だ。

写真:アフロ(画像はイメージです)

冒頭のシーンは高速道路の大渋滞から始まる。誰もがLA LA LAND(現実離れした夢のようなところ、という意味)を目指している。

そんな中、貧乏そうな緑のボロ車のカーステレオから、映画史に残るミュージカル楽曲「Another Day of Sun」の歌い出しが聞こえてくる。

車の中には、黄色いワンピースを着た若い女性。
彼女は、女優になる夢をかなえるためにLAにやってきた。故郷に置いてきた元カレとの映画館でのひと夏の思い出、夢の街に出てきてからヘコみながらも頑張る毎日を「Another Day of Sun」の歌詞に乗せて口ずさむ。やがて彼女は車を飛び出し、いかにもミュージカルが始まった! という感じでエネルギッシュに踊り出す。

戸惑いながら見ていた他のドライバーも、黄色のワンピースの彼女の歌と踊りに共感し、一人またひとりと、皆がつられて歌い、踊り出す。やがて、また別の黄色いワンピースの女性に導かれて、LAを目指す全てのドライバーの大合唱になっていく.........。

『ラ・ラ・ランド』は、女優を目指すミア(エマ・ストーン)と、理想のジャズクラブを持つことを夢見るセブ(ライアン・ゴズリング)の、LAでの切ない恋の物語だ。(※ちなみに、オープニングシーンにはミアもセブも登場しない)

Summit Entertainment / Photofest / ゲッティ イメージズ

ミアもセブも理想主義者で、偏屈で、あまのじゃくだから、自分の本当の気持ちとは裏腹な態度しか取らない。

最高にロマンチックな夜景を見ても、「こんなの、まあまあね」とか、お互いが気になってしょうがないのに、「あなたになんて興味ないから」とそっけない。

でも。
ミアもセブも自分の夢に自信を持っていて、お互いの夢も絶対にかなうと信じている。その共通点が、お互いを強力に引きつけていた。やがてひかれあう2人だったが、相手を愛しているがゆえに、相手の夢を応援するがゆえに、いつしか2人はすれ違うようになって.........。

Summit Entertainment / Photofest / ゲッティ イメージズ

ここで、例のオープニングシーンについてもう一度考えてみる。

離れた故郷について歌っていた黄色いワンピースの女性って、ボールダー・シティーからLAに上京してきたミアを表していたんじゃないか? 
なんなら、黄色いワンピースの女性を演じている「その女性」は、エマ・ストーンのようなオスカー女優になることを夢見て、『ラ・ラ・ランド』のオーディションを勝ち抜いた本物の女優の卵だったのではないか?
それを言うなら、映画の幕開けを飾った全ての無名のダンサー、シンガー、エンターテイナーたちは、それぞれの夢をかなえるために、リアルに高速道路に乗ってハリウッドにやってきた夢追い人たちだったのではないか?

彼ら、彼女たちは、ほんの一握りの者しか成功できない、厳しい競争社会のエンタメ業界に身を投じている。毎日オーディションに落ちてはヘコみ、家族や周囲の人からは夢見がちなおバカと思われているのかもしれない。

写真:Splash/アフロ

それでも。
映画が音楽がダンスが大好きなんだからしょうがないじゃない。お金が無くたって、周りからはおバカよばわりされたって、自分の夢に対する気持ちは本物。映画を芸術をリスペクトする気持ちも本物。チョイ役だっていい。素晴らしい映画に関われただけでも光栄だわ。
.........なんていう、リアルな人々の気持ちが伝わってくるような気がするくらい、オープニングに登場する名もなき夢追い人たちの、心底楽しそうな笑顔がたまらない。

Summit Entertainment / Photofest / ゲッティ イメージズ

実際、例のオープニングシーンは『ラ・ラ・ランド』の監督が、バスルームなのかトイレなのかどこかで(多分)、「LAに向かう高速道路で、カラフルな衣装を着た演者たちがいきなり歌い踊り出し、最後は大合唱になったら面白いな。しかも、それをワンテイクで撮るんだ」なんてイカれた事を思いついてしまって、いざ撮影をする時も「監督、なにバカなこと言ってるんですか。それは無理ですよ」とか言われながら作ったはずだ。

一方で、そのアイデアを聞いて「なにそれめちゃめちゃ面白そう!」と思ったたくさんのダンサー、シンガー、エンターテイナーが集まってきて、監督の思いつきのイカれた夢のようなワンテイク撮影のために、炎天下の中、何度もリハーサルを重ねていったはずだ。(注:以上、夢見がちなアカリの妄想)

それでもやはり。
おバカな(と周囲から言われている)人が、映画史を塗り替えてしまう作品を作り上げるのだ。しかも、1人の人間の「おバカ」は、伝染する。
やがてその「おバカ」たちが今までになかった流れを作り出す。映画をはじめとする芸術は、そうやって今まで脈々と進化してきた。

これはなにも映画の世界だけではない。恋愛だって夢だって、私たちは1つの特等席を争いながら、選ばれなかった多くの人間は毎日ヘコみまくったりしているんだ。
でも、そういうほろ苦さが私たちの人生を豊かで深いものにしてくれる。そんなひたむきな「おバカ」さが、いろいろな人の背中を押していく。

写真:Splash/アフロ

そして何より、好きなんだからやめられない! 次の日(Another Day of Sun)が来ればまた、おバカなことを繰り返してしまうんだ。

ミアのおばさん、黄色いワンピースの彼女、『ラ・ラ・ランド』のオーディションに落ちて制作に関われなかった全ての人たち、毎日へこたれながらも前に向かって生きていくおバカな人たち、この世界を、ほろ苦く愛すべきものにする全ての人たちに、心からの愛と賛辞を送りたい。

写真:アフロ

.........とオープニングシーンだけでこれだけ語れる『ラ・ラ・ランド』は、どれだけ見ごたえがあって奥が深いの! という感じですが。ミアとセブのラストシーンについては、またの機会に存分に語ろうと思います。

『ラ・ラ・ランド』は何度見ても、いやむしろ何度も見るからこそ楽しめる作品です。
ぜひ、色んな角度から楽しんでみてくださいね。

映画『ラ・ラ・ランド』を無料で視聴する
配信終了日:2019年3月9日〜3月22日 23:59

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アカリ
アカリ

恋愛映画&人生映画が大好物。大学時代に観る専だと勘違いして入った映画研究会で、自主制作映画の女優をやらされた経験アリ。『Lolita(1997)』『SATC』大好き。

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