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笑って泣ける映画『シークレット・スーパースター』と取り巻く現実

バラトヒポ
バラトヒポ

好みの映画が日本で公開されることが少ないインド映画好き。興行収入の数字で熱くなれる体質。 ...

予告編で予想していた映画の内容が、実際に観たら全く違ったなんてことがあります。
『シークレット・スーパースター』もそのひとつ。
歌手を夢見る女の子のサクセスストーリーだと思って観たら予想外の展開に驚きました。

大都市ムンバイから少し離れた地方都市に住む14歳のインシア。
6歳に買ってもらったギターを演奏し、歌うのが大好き。
いつか世界中の人に自分の歌を聴いてもらいたいと夢見ています。

(C) AAMIR KHAN PRODUCTIONS PRIVATE LIMITED 2017

そんなインシアを母親は応援してくれますが、父親は男尊女卑の考えの持ち主。
弟ばかりかわいがり、インシアに酷くあたります。
気に入らないと暴言を吐き、暴力もふるうこともあります。
そこでインシアは正体が分からないよう全身を覆うブルカをかぶり「シークレット・スーパースター」と名乗って動画配信サイトYouTubeに自分の歌を投稿します。

(C) AAMIR KHAN PRODUCTIONS PRIVATE LIMITED 2017

その動画は大きな反響を呼び、テレビでも取り上げられ、音楽プロデューサーのシャクティ・クマールから誘いを受けます。
シャクティの評判の悪さから、インシアは迷いますが、ある計画を胸に誘いに応じます。

インシアの母親が頑なに離婚を拒むことに疑問を持つ人もいるかもしれません。
日本の離婚率が30%以上なのに対してインドは2%程度とごくわずか。
父親がインシアに結婚相手をほのめかすシーンがあるようにインドではお見合いが主流。
家族ぐるみのつながりを断ち切れば実家との関係も難しくなります。
親が決めた結婚相手と別れるのは、親に逆らうのと同じと考える人もいるでしょう。
さらに女性が働く場所は限られます。幼いうちに結婚させられ十分な教育を受けられないこともあります。
離婚したら生活の場もなく経済的にも難しい。これでは母親が離婚を躊躇するのも無理はないでしょう。

しかし、重いばかりの作品ではありません。
母親との仲の良さや弟グッドゥのいじらしさに救われます。
インシアをひたむきにサポートする同級生のチンタンとの淡い恋物語もあります。
さらに、短気で口が悪く、服装の趣味は最悪の音楽プロデューサー、シャクティ・クマールは最後の最後まで笑いを誘います。
そして何より美しいメロディーと清潔な歌声に胸を打ちます。
泣いて笑って最後の展開に、すっきりした気分で映画館を出ることができます。
映画館では観客の多くが、にこやかに、でも鼻をグズグズさせて帰っていく姿が印象的でした。

(C) AAMIR KHAN PRODUCTIONS PRIVATE LIMITED 2017

ただ、インシアを演じたザイラー・ワシームには映画以上に厳しい現実があります。
彼女は6月、信仰を理由に映画界からの引退を発表しました。
『ダンガル』でデビュー後、これまでに受けた中傷や非難が関係していると考えられています。
さらに8月、彼女の住むジャンムー・カシミール州は自治権をはく奪され、派遣された多くの治安維持部隊により移動は厳しく制限され、電話やインターネットの回線は 遮断された状態が続いています。

写真:ロイター/アフロ

彼女にとっては映画どころではないかもしれません。
それでもこの作品でシャクティが言っていたように、
「才能のあるものは自ずと浮かび上がってくるもの。 」
神の思し召しがあれば戻ってくるものと信じて復帰を待ちたいと思います。

『シークレット・スーパースター』 予告編

映画『シークレット・スーパースター』
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好みの映画が日本で公開されることが少ないインド映画好き。興行収入の数字で熱くなれる体質。

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