IDでもっと便利に新規取得

ログイン

ここから本文です

【無料配信】映画『誰も知らない』は誰も責めない。批判の多い世の中でただ受け入れるように鑑賞したい1本。

アカリ
アカリ

恋愛映画&人生映画が大好物。大学時代に観る専だと勘違いして入った映画研究会で、自主制作映画の女優をや...

おうち時間が増えた今、スマホやパソコンを何となく見ていると、とめどもなく流れてくるニュースやSNSに対する大量の批判的なコメントが目に入ってしまって、疲弊しているのは私だけだろうか。

誰かが問題のある行動をした、というニュースに対して、糾弾する鋭い言葉の数々。
社会的な問題が明るみに出ると、「悪いのは誰だ」、「適切な対処をしなかったこの人がダメだった」......と批判の嵐。

批判をする人たちも、「少しでも『善く』あるために」意見をしているものも多いのだと思う。
そして実際に本当に、誰かが「悪い」場合もあり、ネットやSNSで声なき声が大きなうねりとなり、社会を「善い」方向に動かしていくということもある。
だが、当事者や、周りの人や、関係のない人に必要以上に負のエネルギーを与えている場合はないか。

映画『誰も知らない』は、実際に起きた保護責任者遺棄事件を題材にした作品だ。
母親が4人の子供を残して家を空け、やがて起きる悲しい出来事を丁寧に丁寧に描いている。

実際の事件でもきっとそうであったように、いくつもの「こうすればよかったのに」といった場面があるのだが、是枝監督は決してそれらを責め立てるように描いたりはしない。登場人物たちにもそれぞれの事情と立場があり、各人はそれぞれの事情のもとでただ毎日を生きているだけのように思える。

この映画の描き方を通して思うのは、きっとこの映画を観ている私たちも、毎日小さな間違いや過ちを犯しながら生きているわけで、誰かを一方的に責めたり、「ダメじゃないか」と批判したりできる立場にあるのだろうか? ということ。あるいは、一見加害者に見える人物も、一方では被害者であったりして、世の中は思ったよりも複雑なのではないだろうか? ということ。
そして何より、人に対して非難したり、何かの問題に対して一方的にジャッジメントを下したりするということは、糾弾されている人だけでなく、同じような間違いを犯している他の多くの人たち、ひいては、これから同じような過ちを犯すであろう発言者本人を含めて、社会全体を本当に狭く暗く苦しい場所に追い込んでいくのではないかということ。

たくさんの言葉にあふれて息苦しくなってしまった最近の世の中で、私たちはどうやって社会的な問題を直視し、横たわる根深い問題に立ち向かっていくべきなのか。
『誰も知らない』はそういった「スタンス」に関する難しい問題に対して、静かな提案をしているように思える。

映画は2004年公開のものだが、環境が大きく激変した2021年において全く色あせていないことにも驚かされる。
人間の過ち、弱さ、中途半端な優しさ、刹那的な美しさ......。
どれも文字にするとありきたりな印象になってしまうが、この映画はもっと普遍的なものに触れているのだと思う。

批判をせずとも、ジャッジメントをせずとも、私たちは感じるべきものを感じ、行動をすべきことは行動することができる。(それがただ、受け止め、受け入れるだけであったとしても。)

批判や正義といった鋭く強い力によって削り取られずに残されたエネルギーで、私たちはきっと前に進むことができる。

『誰も知らない』
監督:是枝裕和
出演:柳楽優弥 北浦 愛 木村飛影 清水萌々子 韓 英恵 YOU
製作年度:2004年
上映時間:141分
無料配信期間:2021年2月26日〜3月11日

GYAO!ではユーザー登録不要で無料映画をお楽しみいただけます。

アカリ
アカリ

恋愛映画&人生映画が大好物。大学時代に観る専だと勘違いして入った映画研究会で、自主制作映画の女優をやらされた経験アリ。『Lolita(1997)』『SATC』大好き。

記事はここで終わりです。

新着記事一覧