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【PR】似ていない柳楽優弥のキャスティングが、感動ドラマ成功へのカギとなった

斉藤博昭
斉藤博昭

映画専門のフリージャーナリスト、フリーライター。ダンサー経験もあるのでミュージカルにはうるさく、幼い...

Netflix映画『浅草キッド』独占配信中。

ビートたけしが作詞・作曲を手がけ、自ら歌った「浅草キッド」。その歌詞は、たけし自身の過去を振り返るもので、彼の従来のイメージを少しだけ覆し、センチメンタルな哀愁とともに心を切なく締めつけてくる。

同じタイトルのこの映画は、やはり似たような感覚を導いていく。芸人、ビートたけしの原点をたどるという意味で、これ以上ない仕上がりと言っていいだろう。

Netflix映画『浅草キッド』独占配信中。

多くの人が観る前に期待すること、あるいは不安に感じることは、若き日のビートたけしが本人ではない俳優に、どのように再現されるかという点だ。あまりにもメジャーな人物を、映画やドラマで別の俳優が演じる場合、どこまでそっくりにするかが大きなポイントになる。しかし、単にモノマネをしたら、演じる側もそちらに気を取られてしまい、最も大切な「演技」がおろそかになるリスクもはらむ。観ている側も、「そっくりショー」として受け止めてしまう。

最近の成功例なら、『ボヘミアン・ラプソディ』でフレディ・マーキュリーを演じたラミ・マレックあたりか。フレディ本人に"ある程度"似ているラミだが、妙にモノマネに固執せず、全体の雰囲気でモデルに寄せていき、重要なシーンでは演技に集中していた。しかしフレディは、30年も前にこの世を去った人であり、過去の著名人の再現ならさまざまな好例が思い浮かぶだろう。しかし、現在も存命中で、しかも日々、テレビなどでその活躍を目にしている偉大な人物に演技でなりきるのは、相当に高いハードルだ。その意味で、北野武/ビートたけし役に挑んだ柳楽優弥という今回のパターンは、それだけで多くの人が興味をそそられるはずである。

ビートたけしと柳楽優弥。その顔を思い浮かべると、そもそも「あまり似ていない」と感じる人が多いのではないか? しかし、この「似ていない」ところが、逆に違和感なく観ていられるという好結果につながった。若き日のたけしを演じるうえで柳楽のアプローチは、誰もがよく目にする、たけしの癖のある動きをあちこちに取り入れつつも、決して大げさにならず、嫌味を一切感じさせない。演技の芯になっているのは、自分が何になりたいのかという一人の男の苦闘や葛藤である。こうした真摯なアプローチによって、ツービートの漫才シーンも「再現」というより、「俳優の演技の延長」として受け止められる。そっくりを期待していた人の予想を、いい意味で裏切り、作品世界にスムーズに導入する役割を、柳楽は見事に果たしたのだ。

Netflix映画『浅草キッド』独占配信中。

そしてもう一人の主役が、ビートたけしの師匠である、"幻の浅草芸人"深見千三郎。演じるのは大泉洋で、こちらは意外なほど(と言っては失礼だが)どっしりとした存在感で柳楽の演技に応えている。たけしの芸風である「バカヤロー」というセリフが、深見から受け継がれたこともわかるし、何より「(客に)笑われるんじゃねぇ。(客を)笑わせるんだよ」という深見のポリシーが、現在に至るビートたけしの血肉になっている事実が美しく語られ、つまりこれは師弟の一体の物語、いやむしろ深見の人生として受け止めれば、よりエモーショナルな味になる。

明らかに時代から取り残されつつ、一方で日本の芸能史に燦然と輝くスターを送り出した、影のレジェンドに対し、本作は大きな敬意を払っており、その精神が最後まで充満しているので、クライマックスは涙を禁じ得なくなる。同じくタケシ(役柄上は一応、カタカナ)に「帰ってこないでよ」と背中を押す門脇麦の踊り子とともに、自分では叶えられない夢を誰かに託す感動の構図は、『ニュー・シネマ・パラダイス』や『リトル・ダンサー』ともシンクロする。

監督・脚本を務めた劇団ひとりは、こうした師弟の悲哀を軸にしながら、基本的にエンタメに徹した演出で、楽しさと感動のバランスも計算された作り。特にタケシがタップを練習するシークエンスなどはダンスムービーやミュージカルを観ているような高揚感も誘う。1970年代の浅草もセットとCGできっちり再現されているので、当時の風景に素直にトリップしてしまうのだ。

これだけのバランスの良さ、そして描く相手へのリスペクトに隙がないので、北野武/ビートたけし本人がこの『浅草キッド』を観ても、おそらく文句のつけどころがないのでは......と想像できる。そして、もし天国の深見千三郎が観たら、「バカヤロー」と言いながら、涙を流し続けることだろう。

Netflix映画『浅草キッド』は、全世界独占配信中。

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『浅草キッド』
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斉藤博昭
斉藤博昭

映画専門のフリージャーナリスト、フリーライター。ダンサー経験もあるのでミュージカルにはうるさく、幼い頃からあこがれの国だったイギリスの映画が大好物。ベスト1本挙げるなら『ザ・コミットメンツ』。

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